「絵本『がまくんとかえるくん』の、シンプルだけど奥深い世界にひたる」

　　カウンセラー佐々木です。自分が幼少期に読んだ絵本、子どもができて読み聞かせをした絵本など、多くの絵本と出会ってきましたが、その中でも一番お気に入りで何度も読み返している絵本があります。

　　それは、「がまくんとかえるくんシリーズ」で親しまれている、アーノルド・ローベル作『ふたりはいっしょ』『ふたりはきょうも』『ふたりはともだち』『ふたりはいつも』の４冊です。

　　それぞれどの一冊を手にとっていただいても楽しめる短編が５編ほど入っています。ちなみに私が一番お気に入りなのは『ふたりはきょうも』の最終話なのですが、それはまた別の機会にご紹介させてください。

　　まず、登場人物は言うまでもなく二人（二匹？）のかえるです。一方は普通のかえるの「かえるくん」で、もう一方はがまがえるの「がまくん」です。かえるくんは穏やかで広い心の持ち主で、少々自己中心的にも見えるがまくんを受容的に受け止めてくれる優しい友達。

　　がまくんはわがままに見える時もあれば、親友を思う優しさもあり、なかなか憎めないキャラクターです。がまくんはとてつもなくおいしいクッキーを作ったかと思えば、アイスクリームを両手に持って素早く運べない不器用なところもあり、たびたびかえるくんにフォローしてもらっています。

　　だいたいどの話も大好きなのですが、シリーズの中で勝手にマイベスト５に入れている話で、がまくんがおいしいクッキーを焼き、かえるくんと二人で食べる、というものがあります。「やれやれ」なことが多いがまくんですが、おいしいクッキーを焼けるという特技が実はあるのです。

　　他にもクリスマスのディナーを作ったりと、がまくんは料理上手という設定のよう。そんながまくんが作る絶品クッキーは、止められるわけがない！ということで、お茶の時間に二匹のかえるがむしゃむしゃ頬張り、たらふく食べます。最初は「こんなおいしいクッキーは食べたことがない！」と感動していますが、食べても食べても飽きないおいしさで、だんだん二匹とも止められないことに不安を感じ始めます。

　　「このままだと僕たち食べ過ぎて病気になっちゃうよ！」と心配になった二人は、どうにかしてクッキーを遠ざけようと色々考えます。「高い場所に置いてみたらどうかな？」とか「箱に入れてひもで縛ってみたらどうかな？」など、いろんな方法を考えついては、結局それでも食べてしまうだろうという結論に。そして最後にどうやっても食べられない方法を思いついて・・・。ラストは「あらまぁ」とあっけない感じだけれど、どこか清々しささえ覚えます。

　　互いを思い合う優しい気持ち、おだやかな愛情を文中に読み取るたび、日常の中にある関係をそこに重ねてしまう私です。理不尽なことでゴネるがまくんと、それをなだめるかえるくんといった構図は、友人関係はもちろんのこと、夫婦関係のようであり、親子関係のようであり、恋人関係のようでもあります。ゴネてプンスカしていたがまくんが、ふと「かえるくんは僕のこといやになっちゃったかな？」と不安になったり、約束していた時間にやってこないかえるくんが何かアクシデントに見舞われたのではないかと心配（妄想）するところは、なかなか可愛げがあるので憎めず、読んでいる側も「もう、しょうがないなぁ」と笑って流してしまうので、本当にキャラで得をしているがまがえるです。

　　こぶとりじいさんのように、「良いおじいさんと悪いおじいさん」という明確な善悪が描かれる世界は、「欲ばったり騙したりしてはいけない」という倫理を説くものとして使えますし、がまくんのように「ちょっとわがままだけど、料理上手」というキャラクターは「トホホ・・・な自分でもいいじゃん！」とか「失敗してもいいさ！」というところを教えるものとして使えます。

　　どちらも子どもにとっては大切なことです。子どもの発達段階に合わせて絵本をチョイスし、「どう思う？」と問いかけることで親子の会話が生まれ、子どもの人格を豊かなものにしてくれることでしょう。時には子どもの今直面している問題に、何かしらヒントを与えてあげられるような、そんな絵本をチョイスしてゆけたらいいなと私自身も日々考えています。

　　ちなみに我が家で「食べ過ぎ注意！」な時は、必ず「このままだと僕たち病気になっちゃうよ！」というセリフが登場します。すると、がまくんとかえるくんが目に浮かんで笑いが起き、自然と食べるのを止められます。

　　がまくんとかえるくんシリーズの絵本と、がまくんとかえるくん愛が高じて買ってしまった二匹のハンドパペットは、pazのカウンセリングルームにありますよ。興味のある方はぜひ手にとって見てみてください。