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トークンエコノミーを使う


カウンセラー佐々木です。スクールカウンセラーとして、小学校・中学校・高校へ勤務するようになって、もう10年以上経ちました。

学校というフィールドは、私にとっても大切な場です。保護者から寄せられる子育てについての相談の多くに、「上手な叱り方」「片付けのさせ方」「忘れ物をなくす」「宿題のさせ方」といったものがありました。どれもこれも、定着させるのに一苦労なものばかりですね(笑)。

色々な方法は世の中にあふれていますが、お子さんによって成功するもの・しないものがあります。それゆえ、なぜ成功したか?なぜ失敗したか?の要因について、きちんと分析してゆく必要があります。

その中でも今回は、教育の現場でも広く使われていて、我が子で試して成功したシステムをお教えします。このシステムで我が子は「トイレトレーニング」「着がえ」「幼稚園の準備」「歯磨き」「おもちゃの片付け」といった基本的な生活習慣から、「ピアノの練習」「宿題」といった少々大変なものまでを、毎日の生活の中に定着させることができました。

それは、行動療法などで用いられる「トークンエコノミー」という方法です。「おもちゃを片付ける」という行動を我が子に定着させたい時、おもちゃを片付けるとシールを一個もらえる、シールが10個たまるとごほうびと交換できる、といった、ショップでのポイント制度のようなシステムです。

これは「①おもちゃの片付け(目標設定) ②シール(強化子) ③ごほうび(報酬)」という3つの条件から成り立っています。簡単にできるので、わりと導入しやすいと思います。

まず、何を目標にするかをお子さんと話し合いましょう。本人にも「これができるようになりたい」という動機づけがあると、より効果が上がります。

決めた目標を達成できたら、シールをいくつもらえるかなどを決めましょう。最初は少し甘めの設定をするのがポイント。シール表を作りましょう。可愛いイラストを描いたり色分けしたりと、見た目にもやる気が出そうな工夫をしてみましょう。

目標の行動をできたら、すかさず褒めてシールです。いかにその場で貼れるかもポイントです。目標を達成してからシールを貼るまでに間があきすぎると効果が薄れるということがあるようです。(シールではなくスタンプを押す、チェックを入れるなどでもOKです)シールを貼りながら、必ず褒めましょう。進捗状況について、「あともう少しだね!」とか「もうここまできたね!」など、お子さんのやる気を継続させられるような声かけをしましょう。

ごほうびはあまり高価なものではなく、気軽だけど少し特別感のあるものがよいでしょう。我が家はシール10枚で200円くらいのごほうびという設定でした。最初はシール5枚で100円くらいのごほうびにするなど、アレンジしてみてもいいですね。また、少し高価なものをごほうびにしてほしいとお子さんが希望してきたら、ごほうびまでのシールの枚数を増やすなど、各家庭の家計に合わせ、長く続けられるような価格設定にしましょう。

トークンエコノミーがうまくいった時のことを思い返してみると、「シールをためる量とごほうびのバランスが良い」「親が面倒がらずにすぐにシールを貼れた」「表を見て進捗度がすぐわかった」「シールが増えてゆくことを、親子共々楽しめた」などの要因がありました。また、「妹をいじめたから、シールを貼ってあげない」とか「いけないことをしたからシールを減らす」など、罰を与えるようなことはしませんでした。ごほうびはごほうびで、条件を満たせば必ず与えられるものでなければ、ごほうびとしての意味がないからです。

以前、我が家に遊びにきたママ友が、壁に貼ってあったトークンエコノミーの表を見て「これ何?」と興味を示したので、方法を伝授しました。半年以上経ってから彼女が「教えてもらったあの方法、今でもちゃんと続いてるよ。弟妹たちみんな、自分もやる!って言って、すごくいいねあれ。」と、成果を教えてくれました。子どもたちもエライ!のですが、システムを維持できる彼女の努力も大変なものです。そう伝えると「うちはスタンプを押す方法でやってるんだけど、みんな『スタンプ!スタンプ!』って頑張るの。やりなさい!みたいに叱らなくてすむから、多少面倒だけどこっちの方がよっぽど気持ちがラクなんだよね。」と話していました。

ごほうび制度には賛否あると思います。「物で釣ってやらせていいんでしょうか?」と言う方もいます。物を欲しさに頑張っているだけで、目標となる行動そのものへの意識がちゃんと子どもにあるのか?という質問を受けることもあります。

もし、達成する度にごほうびが与えられていたら、「欲しいものを得るためにそれをやる」という要素が強くなるかもしれません。しかし、この方法の良いところとして、「目標を達成するシステムを作る」ということがあります。シールは励みになりますが、ごほうびがすぐ与えられるわけではないので、努力を維持することが必要となってきます。

また、子どもには「意図的に成功させてあげること」が必要な時があると私は思っています。その成功体験を元に、その後も努力するという経験を積んでゆきます。なので、このトークンエコノミー法も「子どもが成功するための行動を、親が叱らずに導いてゆくための方法」として利用していただけたらいいと思います。

それぞれの家庭に合った方法にアレンジしながら、ぜひ使ってみてください。そして、試した感想などもまた教えていただけたら嬉しいです。 ちなみに我が子、この方法で定着した「おもちゃの片付け」や「ピアノの練習」などは、今ではごほうびがなくともちゃんと毎日やっています。我が家の大人はみんな片付けが得意ではないので、今では「家中で一番片付けが上手できちんとしている人」は、我が家の7歳児なのです(笑)。

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