「ものごとの価値は一つではない。『せかいいちのねこ』について。」
- S
- 2019年2月26日
- 読了時間: 3分

みなさんこんにちは、カウンセラー佐々木です。こちらで以前紹介したがまくんとかえるくんシリーズの「お手紙」が、そろそろ2年生の授業に登場している頃でしょうか。
さて、本日はヒグチユウコ作「せかいいちのねこ」のシリーズのご紹介です。
登場するのは、持ち主の男の子のことが大好きなあまり、「本物の猫になりたい」と願うぬいぐるみの「にゃんこ」。本物の猫になると、もっと可愛がってもらえると信じています。男の子の家に住む本物の猫をうらやましがりつつ、「いじわるねこ」と恐れています。
本物の猫になるためには、たくさんの猫のひげが必要と聞いたにゃんこは、これまた持ち主の男の子が大事にしているぬいぐるみで親友のアノマロ(マニアックな古代生物の一種です)と一緒にひげ集めの旅に出ることに。旅の中ではたくさんの出会いがあったり、アノマロがいばらにからまって身動きが取れず、救助しようとしているうちに行方不明になるなど、様々な出来事が起こります。
にゃんこの家に住む本物の意地悪猫は、にゃんこのピンチの時はそっと助けてくれたり、乱暴そうに見える言葉の裏にはにゃんこのことを思う優しさがあったりと、「案外いいやつなのかも」と思わせてくれるような猫です。(罪をかぶってくれたり、病院を恐れていたりと、なかなか人間味?があったりします)
他にも、自分の容姿を醜いと信じていて帽子で顔を隠している猫が出てきたり、旅をしている猫が出てきたり、凛々しい本屋のお姉さん猫が出てきたりと、登場猫たちもキャラに富んでいるのも魅力です。
しかし興味深いことに、彼らにはとりたてて特別な名前がついていません。「にゃんこ」「いじわるねこ」「旅のねこ」「本屋のおねえさん」など。彼らの特徴を説明するような呼び方だけですが、その説明だけでどの猫のことを言っているのかすぐわかるような、そんな個性的な猫たちです。あえて名前をつけないことに作者の意図がありそう・・・というのは考えすぎでしょうか。
そしてまた、物事には善と悪とが存在することや、悪く見えてもそうではないことなど、なかなか示唆に富んでいます。はっきりとした善悪で描き分けるようなストーリーではないところは、子どもには多少わかりにくいかもしれませんが、そこに魅力を感じる大人のファンも多いのではないでしょうか。
そうは言いつつも、「掛け値なしの善」といったようなものが随所に登場し、疲れた大人の涙腺をゆるませてくれます(笑)。
さて、にゃんこは果たして「本物の猫」になれたのでしょうか?
本物の猫とは?
そしてタイトルにもある「せかいいちのねこ」とは?
登場猫たちの中に、なんとなく自分と重なるような、また、自分がこうありたいと願うような猫が(あるいは猫以外の生物が)出てくるかもしれません。
ぜひ読んでみてください。
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